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蝶毒、すみれの蕾中心。 18禁乙女ゲーについての萌え吐き出しブログです。 ★ペルオペ追加しました
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VFBのペーパーがたまらなかったので、
幼いお兄様と百合子さんの話です。
色々背景を想像すると、やるせなくなるね…

隠れ鬼


淡い光が宵闇の廊下に落ちていた。
耳を澄ませば微かにひたひた、と小さな足音が近づいてくるのが分かる。
と、其れがふいに止んだ。
足音の主である少年は、軽く息を飲んで前を見つめている。
彼の目の前にあるのは彼自身の部屋に続く扉だった。そして、その下方に蹲っている小さな影が、
少年を今吃驚させている其の物であった。
瑞人はようやく息をつくと、そっと屈みこんで其れを抱き上げ、扉をくぐった。


硝子細工を扱うかのような手つきで、瑞人は妹の躰を寝台に横たえた。
手を宛てた頬はすっかり冷えてしまっている。
「んん…」
可愛らしい口唇からあえかな声が漏れ、うっすらとその目蓋が開いた。
「…あ…兄様…」
「ああ百合子…起きたのかい?」
「ええ……私……」
「僕の部屋の前で眠っていたんだよ。全く…」
風邪をひいてしまうだろう?と続けようとした瑞人であったが、
ふいに身を起こした百合子に抱き着かれて言葉を止めた。
「兄様…良かった…」
「百合子……もしかして、とは思うけれどずっと此処で待っていたの?」
こくりと百合子は頷く。
「だって、目を覚ましたら、隣にいないんですもの…どこへ行っていたの、兄様」
そう俯いてしまう百合子の顔は半ば泣きかけている。
瑞人の胸に痛みが走った。
「ごめんよ。…女中たちとね、遊んでいたんだよ」
「女中と…?」
不思議そうに首をかしげる百合子に曖昧に頷いて見せた。
「お前はすっかり寝入っていたからね。起こしてしまうのも忍びなくてね」
「そうだったの。ね、どんな遊びをしていたの?」
安心した百合子は、今度は瑞人と女中の遊びに興味がわいたらしい。
「そうだね……じゃあ、試してみようか?」
「え…?きゃっ!」
突如抱き寄せられて百合子は小さく悲鳴を上げる。
見上げると兄の悪戯っぽい目が笑っていた。
「もうっ…吃驚したわ!」
「ふふ。駄目だよ、きちんと逃げなければ」
瑞人は愛おしげに目を細めて、両腕に閉じ込めた妹を見る。
「僕は、鬼だからね。僕に捕まったら、お前も鬼になってしまうよ?」
笑う瑞人の目の奥は、しんと静まり返っている。
百合子は少し考え、小さな腕を伸ばして自分も兄を抱きしめた。
「百合子?」
「私が鬼になったのでしょう?今兄様を捕まえたから、これでお相子だわ」
「…お前は…ふふ。仕方がないね。降参だよ」
くすくすと笑う瑞人の腕は、離れるどころかますます力が籠っていく。
「兄様、痛いわ」
「嗚呼、ごめんね。でも、もう少し」
少しと言いながらも全く離れる様子のない瑞人に、百合子は諦めて好きにさせる事にした。
それに、こうやって兄に包み込まれるのは嫌ではない。
「…百合子。上手に、逃げておくれよ」
「……分かったわ」
首を傾げつつ、きっと今度一緒に遊んだ時の事を言っているのだろうと百合子は頷いた。
「ねえ兄様。木に登ったりするのも構わないのよね?」
「ええ?」
驚いたように高い声を上げ、それから朗らかに兄は笑った。
「お前が、下りられないような高さでなければ、僕は気にしないよ」
「…もう!」
先日の事を思い出し、頬を膨らます百合子にますます笑みを深くしながら、
瑞人はもう一度、腕の中の存在を抱きしめた。

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ただいま蝶毒、すみれ、平井さん、大石さん中毒です。
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蝶毒はお兄様、真島 すみれはハル、トウワ、ムツキ
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