蝶毒　Ｗ兄の現代パロ妄想もの…です。
続きも一応考えていたんだけど、間に合わなくて…；
この3人のルート、ＦＤにないかな…ないかな……ないかな…
お兄様だって追いかけていってよ…


お友達のお誕生日祝いに捧げました♪
おめでとう～(*´∀｀*)これからも一緒に萌え萌えしよう!!



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窓を開ければ、そこには一面の青が広がっていた。
「綺麗…」
庭には盛りを迎えた花が艶やかに咲き誇り、百合子はうっとりと呟く。
「百合子、起きたの？」
足音に目を向ければ、穏やかに笑んだ彼女の兄が立っていた。
百合子が覗いていた窓辺に寄り添うようにして外を見る。
「あっ清兄様。おはようございます」
「うん、おはよう。今朝もいい天気だね」
そう言って百合子の頭を撫でる兄、清はれっきとした男ではあるのだが少し線が細い。
その面差しは百合子とよく似ている。
小さい頃は見分けがつかないとよくからかわれたものだが、
成長するにつれ、整った顔立ちは周りの少女を騒がせるのに十分な程凛としたものとなった。
「花を見ていたの？」
百合子の目線の先に気づいたのか、清が顔を綻ばせた。
清は土いじりが好きで、庭の草木が生き生きとしているのは彼の日々の努力のたまものなのだ。
学校では風紀委員も務め、クールで評判な清だが、百合子はこの兄が意外と
細かい作業を好み、笑い上戸である事を知っている。
「そうよ。今日も綺麗だなあって」
「うん。うまく咲いてくれてよかった。この種は意外と育てるのが難しいんだ」
そう言って百合子には分からない専門的な用語を並べ始める清に百合子は苦笑して、けれど
その声に耳を澄ませて聞き入った。清の声は心地いい。小さい時からその声でよく眠ってしまったものだ。
それに話も面白くて、百合子の知らない事を沢山知っている。

そうして話を聞くうちに、あっという間に朝の時間は過ぎていく。
「大変！もうこんな時間だわ…私、起こしてくる！」
「ああ…ほっておけばいいのに」
「そういうわけにもいかないでしょう？もう清兄様ったら…」
百合子だってまだまだ清の話を聞きたい所ではあったのだが、そこは仕方がない。
ふ、と表情を冷たくする清を気にしつつも、百合子は廊下を走り、
トントンと一枚の扉を叩いた。

「お兄様、もう時間よ。お兄様！」
声をかけるも物音一つしない。
それは毎度のことであるので、ためらいもなく百合子は中に足を踏み入れた。
ベッドに近づけば、案の定すやすや寝息を立てる人物が背中を丸めていた。
目を閉じたその顔は清とはまた違う危うい美しさを秘めている。しどけなくかかる長めの髪は
闇のごとく漆黒で、百合子はつい見とれてしまいそうになりながらも慌てて目を逸らした。
薄暗い部屋の中、百合子は容赦なくカーテンを開け放つ。
急激に差し込む陽の光に、「ん…」と微かな声が上がったが、それも束の間でまた眠りへと落ちていく。
そうはさせじと近づいた百合子は、もう一人の兄の顔を覗きこみ、耳元で大声で呼ばわった。
「お兄様っ！！…きゃ…！」
ふいに倒した上体を抱え込まれて百合子はうろたえる。
「お兄様ったら！ふざけないで！起きているならもう着替えないとっ…」
「…ああ可愛い声が聞こえるね…。ねえ、僕をほってどこへいっていたんだい？お兄様は寂しかったんだよ？」
「もっ、もう…、いいかげんに…！」
声を荒げた百合子は突然の刺激にぴくりと身を竦ませる。
兄が――瑞人が、自分の手の甲を舐めたのだとわかると羞恥が這い登ってきた。
「お兄様っ!!どなたと勘違いされているか知らないけれど、私だって怒るわよっ!!」
「…ああごめん、ごめん。そうやって赤くなったり青くなったりするお前が可愛らしくて、ついね」
「…っ！！知らないっ！！」
足音を立てながら百合子が部屋を出て行ってしまうと、瑞人はくすりと笑みを浮かべた。
「…勘違いでは、ないのだけれどね…百合子」
だがその笑みはひどく苦く、倦怠が瑞人の身体を覆い尽くしていく。
今日もまた朝が来てしまった。いつもこのまま目覚めなければいいと願いながら眠りにつくのに、
瑞人の願いは叶えられた事はない。そのまま寝直そうとした瑞人の耳に、笑いあう百合子と清の声が届いた。
「ああ、けれど、そうか。今日は…――」
瑞人はふと大事な事を思い出したかのように身を起こした。
きっと清も同じことを考えているだろう。姿形は似ていないのに、心根は嫌な程通じ合った所があった。
瑞人は手早く支度を済ませ、居間へと向かった。
今日だけは――百合子の誕生日だけは、きちんと祝ってやりたかった。

[3回]