ねえ、姫様。あなたは知らないでしょう？
俺がどんなに、あなたに焦がれていたか。

あなたを滅茶苦茶にしてしまいたかった。
あなたを壊して、貶めてしまいたかった。
だって俺には、他に如何することもできなかったんです。
三郎に阿片を与えたのは他でもない、俺です。
あいつは中毒ですから、何かしでかす事ぐらい予想がついていました。
いやむしろ其れを狙っていたと言ってもいい。
それなのに…大怪我を負ったあなたを見た時、俺は我を失っていた。
半身が引き千切られるような痛みでした。
可笑しいでしょう？わかりきっていた筈なのに、俺の感情はちっとも俺に従順ではなかったんです。
けれど斯うして姫様を腕に抱いていると、其れも当然のような気がします。
だって、俺はこんなにも満たされている。

あなたの大きな瞳も可愛い耳も今では用をなしていない。
あなたの目には俺は映らない。
俺の罪があなたに知れる事は…ない。
肌の上をなぞられる度に、俺の躰は浅ましく熱を持つ。
「あぁ」
あなたの甘い吐息が俺を酔わせる。
俺たちの香りが溶け合っていく。

「姫様…愛して、います」
此の告白が、あなたに届く事はないけれど。

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